ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」(NBRP-Rat)では、ライフサイエンス研究の進展に必須の生物資源(バイオリソース)であるラットの収集・保存・提供を2002年より実施しています。このNBRP-Ratの分担機関として、東京大学医科学研究所では、重症免疫不全およびCreドライバーラットの保存・提供を行っています。
ラットは、適度な大きさと高い適応能力をもち、また遺伝的、環境的に制御することが可能であることから、脳・神経科学、薬理学、学習・行動学、生理学、栄養学など、様々な研究において用いられている実験動物です。
1) 重症免疫不全(SCID)ラット 重症免疫不全ラットは、ヒト細胞やヒトiPS細胞を移植したヒト化動物研究や再生医療研究に広く利用されています。これまでにゲノム編集技術により開発された免疫不全ラットの安定した提供を行っています。
2) Creドライバーラット(ライブラリー) 脳神経、肝臓など組織・細胞特異的に遺伝子発現を誘導するCreドライバーラットは、研究者からのニーズは多いが、種類が十分ではなく、Cre発現情報も不十分です。本事業では、重症免疫不全ラットと同様に、ゲノム編集技術により開発された様々なCreドライバーラット(レポーターラット)の提供を行っています。また、寄託者や提供先研究者の協力を得てCre発現情報を収集し、データベースとして整備、HP上で順次公開して参ります。
近年、免疫不全ラットに対する幹細胞移植、ES/iPS細胞を用いた胚盤胞補完法によるキメラ動物の作製など、ヒト細胞、組織、臓器等を再生したヒト化動物として注目されています。しかし、その技術は専門的であり、普及が十分ではありません。そこで、次世代のラット研究者を育成する目的で、ゲノム編集技術による遺伝子改変ラット作製法や、再生医学領域でのラット利用に関する技術講習会を開催しています。
このようにNBRP-Ratでは、様々な研究用途に応じたラット系統の提供を行っています。また、ラット技術講習会など、研究者支援の取り組みも行っており、ラットを用いた研究の促進と、生命科学分野の発展に貢献しています。
ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」
分担機関 代表 真下知士